学会紹介

学会の歴史

学会設立に至るまでの経緯

わが国における気管食道領域の診療は,久保 猪之吉教授によって創始されたといえる。同教授は明治36年(1903)6月,命ぜられてドイツに留学,フライブルグ大学でキリアン教授に師事し,明治40年(1907)1月に帰国した。久保は,京都帝国大学,福岡医科大学教授として耳鼻咽喉科を主宰し,またキリアン式直達鏡を駆使して気管食道領域の診療に尽力した。

その後1910年,千葉真一博士がドイツ留学から帰国してブリューニングス式内視鏡を,また1934年,小野譲博士が米国からジャクソン式直達鏡を持ち帰つた。第2次大戦後の昭和23年(1948),慶応大学西端驥一教授に招かれて診療を開始し,次第に募る要望に応えて慶応病院で同24年(1949)5月10~12日気道食道検査の講習会を行った。その最終日の懇親会において,出席者から気管食道科学会設立の提唱があり,その意向は翌年の第2回講習会においてさらに強くなった。これを受けて小野は,関係各方面を奔走,林義雄,齋藤英雄,椎津清治ほかの協力を得て発会のための準備を進めた。当時は戦後間もなくのことでGHQ(連合国最高司令官総司令部)に会則や発会式の次第,学術講演の演題などについても英訳し,日本文に添えて提出しなければならなかった。

発会式は,昭和24年(1949)11月20日慶応大学医学部北里講堂で行われ,林義雄博士が本会設立の趣旨と経過を説明するとともに議長をつとめた。学会の名称は「日本気管食道科学会」とし,気管はtracheaに限局するのではなく呼吸管を意味するものとする,会長には衆議一決して小野譲博士が選ばれた。当日午後1時から開催された学術講演会では30題の演題が報告され,学会創立を飾った。

日本医学会分科会と法定診療科への加盟

昭和25年(1950)5月29日,日本医師会において開催された日本医学会評議員会で,本会は正式に日本医学会第41分科会として加入が認められた。さらに2年後の昭和27年(1952)4月16日および19日の両日開催された参議院ならびに衆議院において診療科目としての加入が審査され,満場一致で法定診療科への正式加入が両院を通過した。この審議に当たっては,藤森真治議員の尽力によるところ大であった。

後年,小野はこの件について次のように記述している。本科を独立科目に加えることは昭和9年筆者が帰朝した当時すでに抱いていた念願であった。……(中略)その後慶応大学において気管食道の講習会を開くこととなり,また多くの同志の協力により学会の発足となったことは,本科が診療科目として陽の目を見る絶好の下地となったようである」(昭和43年(1968)刊『日本気管食道科学20年の歩み』より抜粋)

学会の運営組織と経過

学会の運営:当初会長1名,評議員若干名,幹事若干名によりなされてきたが,昭和38年(1963)から運営委員会制度を,また昭和49年(1974)から理事による運営制度がとられ,理事長は理事により選出されることになった。歴代理事長を表1に示す。

表1.会長ならぴに歴代理事長

会長ならぴに歴代理事長
会長
小野 譲
昭和24年11月就任
初代理事長
齋藤 英雄
昭和49年9月就任
第2代理事長
廣戸 幾一郎
昭和53年10月就任
第3代理事長
斎藤 成司
昭和57年11月就任
第4代理事長
井上 鐵三
昭和61年11月就任
第5代理事長
戸川 清
平成2年10月就任
第6代理事長
村上 泰
平成6年10月就任
第7代理事長
天津 睦郎
平成10年10月就任
第8代理事長
幕内 博康
平成14年11月就任
第9代理事長
甲能 直幸
平成18年10月就任
第10代理事長
久 育男
平成22年11月就任
第11代理事長
桑野 博行
平成26年11月就任
第12代理事長
塩谷 彰浩
平成30年11月就任

記念祝典挙行

総会ならびに学術講演会

本学会の年次総会ならびに学術講演会は,原則として毎年秋に総会会長のもとに開催され(表2),関連各科からの多数の出題を得て年々次第に隆盛を辿っている。

表2.日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会

学会 開催年 会長 開催地
第1回
昭和24(1949)
小野 譲
東京都
第2回
昭和25(1950)
小野 譲
東京都
第3回
昭和26(1951)
小野 譲
東京都
第4回
昭和27(1952)
柏戸 貞一
横浜市
第5回
昭和28(1953)
山川 強四郎
大阪市
第6回
昭和29(1954)
佐藤 重一
東京都
第7回
昭和30(1955)
中村 文雄
京都市
第8回
昭和31(1956)
中山 恒明
千葉市
第9回
昭和32(1957)
中村 良太郎
神戸市
第10回
昭和33(1958)
後藤 光治
京都市*
第11回
昭和34(1959)
大藤 敏三
東京都
第12回
昭和35(1960)
渡辺 篤
伊勢市
第13回
昭和36(1961)
佐々木 寛
米子市
第14回
昭和37(1962)
松田 龍一
金沢市
第15回
昭和38(1963)
山本 馨
宝塚市
第16回
昭和39(1964)
河田 政一
福岡市
第17回
昭和40(1965)
片桐 主一
仙台市
第18回
昭和41(1966)
浜谷 松夫
札幌市
第19回
昭和42(1967)
高須 照男
名古屋市
第20回
昭和43(1968)
切替 一郎
東京都**
第21回
昭和44(1969)
鈴木 篤郎
松本市
第22回
昭和45(1970)
内藤 儁
大阪市
第23回
昭和46(1971)
中村 四郎
東京都
第24回
昭和47(1972)
久保 隆一
鹿児島市
第25回
昭和48(1973)
橋本 泰彦
東京都
第26回
昭和49(1974)
粟田口 省吾
弘前市
第27回
昭和50(1975)
猪 初男
新潟市
第28回
昭和51(1976)
萩原 忠文
東京都
第29回
昭和52(1977)
武田 一雄
京都市
第30回
昭和53(1978)
梅田 良三
金沢市**
第31回
昭和54(1979)
石井 英男
前橋市
第32回
昭和55(1980)
佐藤 博
千葉市
第33回
昭和56(1981)
寺山 吉彦
札幌市
第34回
昭和57(1982)
竹田 千里
東京都
第35回
昭和58(1983)
松永 亨
大阪市
第36回
昭和59(1984)
遠藤 光夫
東京都
第37回
昭和60(1985)
上村 卓也
福岡市
第38回
昭和61(1986)
高山 乙彦
東京都
第39回
昭和62(1987)
池田 茂人
東京都
第40回
昭和63(1988)
原田 康夫
広島市**
第41回
平成1(1989)
井上 鐵三
東京都*
第42回
平成2(1990)
大山 勝
鹿児島市
第43回
平成3(1991)
本庄 巌
京都市
第44回
平成4(1992)
田中 隆
東京都
第45回
平成5(1993)
進 武幹
佐賀市
第46回
平成6(1994)
日野原 正
宇都宮市
第47回
平成7(1995)
岩田 重信
名古屋市
第48回
平成8(1996)
中島 重徳
大阪市
第49回
平成9(1997)
海野 徳二
旭川市
第50回
平成10(1998)
天津 睦郎
神戸市**
第51回
平成11年(1999)
加藤 治文
東京都
第52回
平成12年(2000)
夜陣 紘治
広島市
第53回
平成13年(2001)
幕内 博康
東京都
第54回
平成14年(2002)
山下 敏夫
大阪市
第55回
平成15年(2003)
白日 高歩
福岡市
第56回
平成16年(2004)
堀江 孝至
東京都
第57回
平成17年(2005)
久 育男
京都市
第58回
平成18年(2006)
福田 諭
札幌市
第59回
平成19年(2007)
桑野 博行
前橋市
第60回
平成20年(2008)
湯本 英二
熊本市**
第61回
平成21年(2009)
佃 守
横浜市
第62回
平成22年(2010)
川原 克信
別府市
第63回
平成23年(2011)
内藤 健晴
名古屋市
第64回
平成24年(2012)
小川 郁
東京都
第65回
平成25年(2013)
赤柴 恒人
東京都
第66回
平成26年(2014)
兵頭 政光
高知市
第67回
平成27年(2015)
大森 孝一
福島市
第68回
平成28年(2016)
河野 辰幸
東京都
第69回
平成29年(2017)
東田 有智
大阪市
第70回
平成30年(2018)
塩谷 彰浩
東京都

*世界気管食道科学会議と合同開催

**学会創立20、30、40、50、60周年記念祝典挙行