日本気管食道科学会会報 第73巻3号
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図3 頸部造影CT胸骨上縁背側に長径1.3 cmの腫瘤を認めた(矢頭).〈水平断〉III.考  察加え,前頸筋を正中で左右に分けた。甲状腺と気管前・傍の脂肪織を頭側に牽引すると,胸骨裏面の脂肪織内に青色に染色された腫瘤を認めた。腫瘤を周囲から剥離,摘出し(図4),腫瘤の一部を術中迅速病理検査に提出したところ,副甲状腺腺腫の診断であった。手術時間は1時間34分,出血は少量であった。病理学的所見:永久病理検査では主細胞のモノクローナルな増生を認めたが,好酸性細胞は認められず(図5),異所性副甲状腺腺腫と確定診断した。術後経過:術翌日からシナカルセトの内服を中止した。術翌日の血液検査でCa 8.5 mg/dl,P 2.6 図4 術中所見胸骨裏面の脂肪織内に青色に染色された腫瘤を認め,副甲状腺腺腫と同定した(矢頭).247mg/dlと正常化し,intact-PTHは8 pg/mlに低下した。テタニーや低カルシウム血症を認めず,術後7日目に退院した。術後1カ月時点でCaは9.0 mg/dl,intact-PTHは111 pg/mlと正カルシウム血症性原発性副甲状腺機能亢進症の状態ではあるが,シナカルセトの内服を再開することなく高カルシウム血症の改善が維持されている。 副甲状腺腺腫による甲状腺機能亢進症では,画像診断で摘出すべき全腺が描出されないことがある1)。副甲状腺全摘出術を試みた患者の11%が副甲状腺日気食会報,73(3),2022〈矢状断〉

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