I.はじめに 受 付 日:2021年10月19日採 択 日:2022年1月7日J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 3, 2022症 例要旨 異所性副甲状腺腺腫が縦隔内に存在した場合,胸腺や脂肪組織に埋没して,病変の同定に難渋することが多い。今回われわれは,縦隔内の異所性副甲状腺腺腫の局在診断に11C-Met-PET/CTと,術中のメチレンブルーを用いた生体染色が有用であった症例を経験した。症例は66歳女性。近医で原発性副甲状腺機能亢進症と診断され内服加療が行われたが,血清カルシウム値のコントロールは不良であった。MIBIシンチグラフィは陰性であったが,11C-Met-PET/CTが病変の同定に有用で,上縦隔異所性副甲状腺腺腫が疑われ,手術目的に当科を紹介受診した。術中の病変同定のため,メチレンブルーを用いた生体染色を併用して異所性副甲状腺腺腫摘出術を施行した。鎖骨上2横指に襟上切開をおき,胸骨裏面の脂肪織内に青色に染色された腫瘤を認め摘出した。術中のメチレンブルー静脈内投与は,麻酔管理における見かけ上の経皮的動脈血酸素飽和度の低下に注意すれば,異所性副甲状腺腺腫の同定に有用であった。キーワード:原発性副甲状腺機能亢進症,異所性副甲状腺腺腫,メチレンブルー, 連絡先著者:〒520─2192 大津市瀬田月輪町 滋賀医科大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座久保良仁II.症 例1)公立甲賀病院 耳鼻咽喉科,2)滋賀医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座メチオニン,11C-Met-PET/CT245たため,文献的考察を加えて報告する。症 例:66歳,女性既往歴:骨粗鬆症,尿路結石内 服:シナカルセト現病歴:X−2年に背部痛のため近医を受診した。血液検査でCa 14.1 mg/dl,intact-PTH 457 pg/mlと高値であり原発性副甲状腺機能亢進症と診断された。精神症状や不整脈を生じうる高度の高カルシウム血症のため,原因腺精査に先立ってシナカルセト内服加療を施行されたが,高カルシウム血症のコントロールは不良であった。前医でMIBI(99mTc-hexakis-2-methoxy-2-methylpropyl-isoni-trile)シンチグラフィが施行されたが,責任病変の指摘ができず,造影CTおよび11C-Met-PET/CT日気食会報,73(3),2022pp.245─25011C-Met-PET/CTおよびメチレンブルー染色が診断と治療に有用であった異所性副甲状腺腺腫例 原発性副甲状腺機能亢進症で,原因となる病変が縦隔内に異所性に存在するものは5%とまれである。縦隔内の異所性副甲状腺腺腫は術前の責任病変の同定および術中の病変同定に難渋することがある。今回われわれは,術前診断に11C-Met-PET/CTが,加えて術中診断にメチレンブルー静脈内投与が有用であった上縦隔異所性副甲状腺腺腫例を経験し久保良仁1),神前英明2),清水猛史2)
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