日本気管食道科学会会報 第73巻3号
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施したところ左主気管支にT1高信号の陰影を指摘され(図3),豆類など油性成分が多い異物誤嚥による気道閉塞が初めて疑われた。緊急手術の適応と判断され同日当科へ転院となった。 入院時身体所見:独歩可能であり,チアノーゼは認めず喘鳴は聴取しなかった。呼吸苦の自覚もなかった。酸素化は室内気でSpO2 95─96%程度を維持していた。血圧や脈拍の異常は認めなかった。 入院後経過:保護者より「普段からピーナッツは与えないように気を付けていたが,枝豆は好きで良く食べていた」と聴取した。明らかな異物誤嚥のエ図4 硬性気管支鏡で観察した左気管支異物左主気管支に乳白色調の異物(矢印)が充満していた.異物は非常に脆く,把持してもすぐに崩れる状態であった.図5 気管支に充満していた異物239ピソードは確認できなかったが,臨床経過や前医の画像検査結果からは枝豆の誤嚥による気管支閉塞とそれによる無気肺・肺炎を第一に疑った。来院時の全身状態は安定していたが呼吸循環動態の急激な悪化をきたす可能性があると判断し,同日緊急で全身麻酔下の気管支鏡下異物除去術を実施した。経口気管挿管での全身麻酔導入後,軟性ファイバースコープによる観察を行うと左主気管支に充満する異物を確認できた。一度抜管し硬性気管支鏡(KARL-STORZ:Full lumen operating tracheoscope)で換気しながらの操作へと切り替えた。異物の性状は乳白色調(図4)で非常に脆く,鉗子で把持してもすぐに崩れる状態であったため吸引カテーテルなども図6 気管支異物の病理学的所見(HE染色)(A)好中球・好酸球を主体とする著明な炎症細胞の浸潤を認める.(B)滲出液,壊死組織(※),粘液(矢印)からなる組織である.日気食会報,73(3),2022(A)(B)

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