日本気管食道科学会会報 第73巻3号
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図2 NPPV管理下での気管支鏡所見気管膜様部は呼吸性に変動するが,明らかな狭窄や粘膜異常は認めない.図3 非PEEP環境での気管支鏡所見気管膜様部の前方突出と気管の虚脱を認める.気管から気管支までの広範囲で気管狭窄を認める.検査では気管内に明らかな狭窄や粘膜異常を認めなかった(図2)。NPPVの離脱ができず,呼吸状態が安定しないために気管支鏡検査に続けて再挿管を行った。そして,気道狭窄を解除する目的に第14病日に甲状腺全摘術および気管切開術を予定した。甲状腺摘出後に気管を観察すると,甲状腺摘出部位の気管軟骨が著明に軟化していたため,気管軟化症と診断した。軟化が強く気管壁の破綻を懸念して,気管切開は行わずに経口挿管を継続し手術を終了した。摘出した甲状腺の病理診断は,腺腫様甲状腺腫であった。 第26病日に局所麻酔下に気管切開術を施行した。気管は周囲組織により補強され,問題なく気管切開術が可能であった。長期挿管による呼吸筋力低下を考慮し,徐々に人工呼吸器からの離脱(ウィーニング)を行い,第34病日に人工呼吸器を離脱した。ところが,第35病日に気管カニューレを交換した際に呼吸困難,努力呼吸が再燃した。気管支鏡検査を行うと,気管から気管支までの広範囲で気管膜様部が前方へ大きく張り出し気管狭窄が生じており,気管気管支軟化症と診断した(図3)。人工呼吸器を装着し持続陽圧呼吸療法(Continuous posi-tive airway pressure:CPAP)を5 cmH2Oの圧設定で開始すると,速やかに呼吸状態は改善した。気管の軟化範囲が広いことから,以後CPAP管理を継続する方針とした。退院して在宅管理を行うか,療養型病床での入院を継続するかの相談を行った結果,在宅での介助者が高齢であることから,療養型病床での入院を継続する方針となった。日気食会報,73(3),2022左主気管支左主気管支気管気管右主気管支右主気管支233

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