表1 初診時血液検査所見白血球,CRPの軽度上昇を認める.呼吸性アシドーシスが顕著であったが,代謝性の代償性変化を認めなかった.太字:上昇,白文字:低下.時診初目日5院入内科にて肺炎と診断され抗生剤(CTX)点滴を行っていた。来院日の午前10時頃,点滴を受けた後に普段と変わらない様子で帰宅した。ところが,午前12時頃に意識のない状態で自宅前に座り込んでいる状態を隣人に発見され,救急搬送となった。 現 症:来院時の意識状態はJCS:300,GCS:E1V1M1であった。聴診では,気道狭窄音は明らかでなかったが,呼吸は浅く30回/分の頻呼吸と努力呼吸を認めた。血圧は150/100 mmHg,脈拍は120〜130回/分と頻脈を認めた。 経 過:気道の異常による意識障害と考え,気管挿管後に集中治療室での治療と意識障害の原因検索を施行した。この時の気管挿管は容易であった。血液検査(表1),全身CT検査,頭部MRI検査,脳波検査,髄液検査などを施行したが意識障害の原因を特定できなかった。前医で指摘されていた肺炎は軽度であり,呼吸状態悪化や意識障害の原因とは考えられなかった。第4病日,意識状態はGCS:E4VtM6と改善を認めた。また全身状態,呼吸状態が改善し,Spontaneous awakening trialおよびSpontaneous breathing trial成功基準を満たしたため,人工呼吸器を離脱し抜管を行った。ところが抜管後徐々に呼吸困難の自覚と頻呼吸が出現したため,非侵襲的陽圧換気療法(Non-invasive positive pressure ventilation:NPPV)をinspiratory posi-tive airway pressure(IPAP):12 cmH2O,expira-図1 甲状腺腫による気管狭窄第6頸椎(C6)から第4胸椎(Th4)レベルでの軸位断CTの,初診時と入院5日目の比較を示す.入院5日目では甲状腺腫が存在するTh1からTh3にかけて気管狭窄を認める.日気食会報,73(3),2022C6tory positive airway pressure(EPAP):4 cmH2Oの設定で開始した。NPPVは著効し,速やかに呼吸状態が改善した。第5病日のCT検査で肺炎像は軽減していたが,初診時のCT検査では認めなかった甲状腺腫による上気道狭窄を認めた(図1)。甲状腺癌の気管浸潤を疑ったが,細胞診では悪性所見を認めず,第6病日にNPPV下に行った気管支鏡血算WBCHbHtPlt生化学検査TPAlbASTALTLDHBUNCreCRPTh2232静脈血液ガス分析pHPCO2PO2HCO39250/μl15.3 g/dl48.1%211000/■l7.5 g/dl3.8 g/dl34 U/l17 U/l229 U/l12.2 mg/dl0.97 mg/dl2.16 mg/dlNaKClTSHFT4FT3GluTh36.9988.8 mmHg51.7 mmHg−20.9 mmol/l135 mEq/dl5.1 mEq/dl102 mEq/dl0.049 ■IU/ml1.14 ng/dl2.65 pg/ml288 mg/dlTh4Th1
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