肺なしリンパ節IV.結 語またLunaら17)は原発巣,治療内容,臨床病期を合わせるとBSCCの生存率や,転移率はSCCと同等であると報告している。本症例においても2症例ともに早期発見され,症例2で静脈侵襲を認めたが,その他の脈管侵襲や神経周囲浸潤は認めず予後は良好であった。 表在型食道類基底細胞癌は報告をしばしば認めるが,下咽頭での表在癌の報告は少なく,ELPSで切除した報告は本症例が2, 3例目であった。食道領域でも治療前診断が難しく,生検でSCCと診断しても,隆起部の立ち上がりや粘膜病変など内視鏡所見でBSCCを疑い,内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)で深めに摘出することもある18)。高橋ら19)の報告によると,表在型食道BSCCの特徴は粘膜下腫瘍様隆起,なだらかな辺縁隆起,黄色調顆粒などがあげられる。また,BSCCは深達度の最深部に存在するため,表層を覆う上皮によって狭帯域光観察(NBI:narrow band imaging)所見が大きく異なる。表層がSCCで被覆されているところはNBI所見でSCCを反映し,非腫瘍性■平上皮で被覆された場合はBSCC特有の血管構造が透見される場合もある。竹内ら20)はBSCCの拡大内視鏡NBI所見日気食会報,73(3),2022本症例表1 下咽頭BSCCの報告例BSCC:類基底細胞癌,SCC:■平上皮癌,S:手術療法,R:放射線療法,C:化学療法.出典文献転帰治療法再発・転移C, R, S肺・脳原病死C, S, R肺・骨・皮膚原病死年齢性別TNM平海ら6)(1999)57女T4N1M0小西ら7)(2000)62男T1N2cM1栗原ら8)(2000)55男T1N0M0神経内分泌細胞癌S横山ら9)(2002)83男T3N0M0BSCC川田ら10)(2005)73男T1N0M0なし岸本ら11)(2005)42女T3N0M0BSCC56男T1N2bM1BSCC竹本ら12)(2014)58男T2N0M0なし中村ら13)(2019)74男T2N0M0SCC71男T4aN2bM0SCC69男T3N0M0山田ら14)(2019)77男T2N0M0生検BSCCSCCSCC or未分化SCC77男T1N2bM1BSCC67男T2N2bM0なし79男T1N1M0なし81男T2N0M0なし78男T3N0M0なし64男T1N0M0SCCSCC67男T1N0M0228で,ループ形成に乏しい異常血管(TypeB2)が不整樹枝状あるいは網状に分布していたが,血管の口径不同は目立たなかったと表現している。下咽頭でも表層が異形成程度の場合,粘膜下腫瘍と診断されることもあるので,粘膜下腫瘍を疑う場合はBSCCを想定し,通常よりも深く切除する工夫が必要と考える。今回,症例2にTypeB1血管とTypeB2血管の混在を認めたが,症例1はTypeB1血管のみでありBSCCの診断は困難であった。症例2では粘膜下腫瘍様の肉眼形態を呈しており,深部浸潤が予想された。 近年は上部消化管内視鏡で発見される下咽頭癌が増えているため,今後さらに同様の症例が増えると考えられる。早期BSCCの症例が蓄積されれば,術前診断や予後,発生頻度などに新しい知見が得られることが期待される。 下咽頭に発生した表在性のBSCC 2例を経験した。粘膜下腫瘍様の形態を呈した場合は,BSCCの可能性も考慮する必要がある。S, RSCR, SなしCS, CRなしなしS, R肺S, RSなしなしS肺CRS, Rなし原発,骨R原発S肺,肝臓SSなしなしS, R骨無病生存無病生存他病死無病生存原病死無病生存無病生存担癌生存他病死無病生存他病死無病生存原病死原病死原病死不明無病生存
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