図3 症例1病理組織所見a)上皮内にSCC(黒矢頭),基底層にbasaloid cell(白矢頭)を認めた(HE染色,×40).b)N/C比の高い腫瘍細胞が小胞巣を形成していた(HE染色,×400).c)小胞巣周囲にPAS染色陽性の硝子様物質を伴い,Alcian blueで青く染色される粘液様物質(白矢頭)を認めた(PAS染色,×400).III.考 察グした(図5a)。上皮下層に生理食塩水を局所注射しながらマーキング外側で粘膜全周を切開し,内側から上皮下層剥離を進め,病変を切除した(図5b)。摘出標本では表面隆起型病変を認めた(図5c)。組織検査所見:腫瘍径は16×13 mm, tumor thicknessは3000 ■mであった。腫瘍は核種大を伴うN/C比の高い異型■平上皮細胞を上皮の全層性に認め,胞巣を形成して増殖し,浸潤するSCC成分を認めた。上皮下には好塩基性胞体を伴った類円形核を有する腫瘍細胞が大小胞巣,篩状構造や腺腔構造を形成していた(図6a)。胞巣の中心には類基底細胞様の小型楕円形細胞の密な増生を伴っていた。PAS染色ではBSCCに特徴的な間質の硝子様物質を認め,胞巣内に好塩基性粘液様物質を伴った腺腔構造を形成していた(図6b)。SCC成分とBSCC成分は上皮下で連続して,一塊となってい225た。以上よりBSCC(pT1)と診断となった。静脈侵襲は認めたが,リンパ管侵襲および神経周囲浸潤は認めなかった。水平垂直断端ともに断端陽性であった。術後経過:断端陽性であったため,術後放射線治療に強度変調放射治療(intensity modulated radia-tion therapy:IMRT 66 Gy/33 Fr)を追加した。その後3年7カ月間は再発なく経過している。 SCCと術前診断され,切除後の永久病理結果でBSCCと診断された表在癌2例を経験した。1例は断端陰性であり,もう1例は断端陽性のため術後照射を施行した。その後の観察期間内ではBSCCの再発転移は認めなかった。 BSCCは気管,食道,肛門管,子宮頸部で認められ,Fritschら3)によると頭頸部では中咽頭(61.9日気食会報,73(3),2022
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