II.症 例図1 症例1表面隆起型病変(白矢頭)の内視鏡所見a)WLI像.輪状後部〜右梨状陥凹に0-IIa病変を認めた.b)FICE像.拡大内視鏡で異常血管の増生が観察された.c)ヨード染色像.病変に一致する不染帯を認めた.223頭鏡を用いて術野を展開した。内視鏡の白色光観察(WLI:white light imaging)では輪状後部〜右梨状陥凹に表面隆起型(Type0-IIa)病変を認め(図1a),特殊光(FICE:flexible spectral imaging col-or enhancement)併用拡大内視鏡観察ではType B1血管の増生が観察された(図1b)。ヨード染色では病変は明瞭な不染帯となり,pink color sign陽性であった(図1c)。病変を同定し,アドレナリン・インジゴカルミン添加生理食塩水を局所注射しながら2 mm程度の安全域を確保して,Forced coag.(VIO3:effect0.6)でマーキングを行った。その外側粘膜を先端可変式の高周波ナイフ(KD-600オリンパス)を用いてEnd cut I(VIO3:effect3.0)で全周切開し(図2a),Swift coag.(VIO3:ef-fect6.0)で上皮下層剥離を進めた。上喉頭神経を温存する層で剥離を行い,病変を切除した(図2b)。摘出標本を見ると肉眼的には切除断端への腫瘍の露出は認めなかった(図2c, d)。組織検査所見:腫瘍径は10×7 mm, tumor thick-nessは500 ■mであった。腫瘍は上皮内にSCCを認めるとともに,小範囲にて上皮下浸潤が観察され日気食会報,73(3),2022症例1:64歳,男性。主 訴:特記すべきことなし。既往歴:中咽頭癌,アルコール依存症。生活歴:喫煙;10本/日×43年間,飲酒;以前は焼酎1 l/日×42年間,現在は禁酒している。フラッシングなし。現病歴:X−5年に中咽頭癌(上壁,SCC, T2N2cM0)に対し小線源治療と右頸部郭清術を施行した。X−1年に中咽頭癌(左側壁,SCC, T1N1M0)に対し中咽頭左側壁切除術,左頸部郭清術を施行した。X年に経過観察目的の上部消化管内視鏡検査で下咽頭右梨状陥凹から輪状後部にかけて表面隆起型(Type0-IIa)病変を認め,生検でSCCと診断された。頸部造影CT検査では原発巣は描出されず,頸部リンパ節転移も認めなかった。上部消化管内視鏡検査では筋層浸潤は否定的であったため,下咽頭癌(左梨状陥凹)cT1N0M0, Stage Iと診断し,ELPSの方針となった。手術所見:アングルワイダーを装着後,彎曲型喉
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