図2 造影CT検査(2(a)冠状断,2(b)矢状断)食道内を占拠する軽度造影効果のある長径約18 cmの腫瘍を認めた.III.臨床経過図1 初診時喉頭ファイバースコープ所見咽頭・喉頭をModified-Killian法で観察したが明らかな異常所見は認めなかった.かった。FDG-PET検査では同腫瘍に集積は認めなかった(図2)。 理学所見,喉頭ファイバースコープ,画像所見から食道原発の腫瘍を疑い,当院消化器外科に紹介し,上部消化管内視鏡検査を施行した。原発は食道内ではなく,左梨状陥凹を基部とする腫瘍が食道内に進展しているとの報告だった。同検査の際,嘔吐反射により口腔まで腫瘍が脱出した(図3)ため,(a)217一部より生検を施行したが,病理は炎症性組織の結果で悪性所見は認めなかった。上部内視鏡検査施行後の所見では左梨状陥凹粘膜の腫瘍基部が顕在化していた(図4)。以上より,良性または低悪性度の下咽頭原発腫瘍と診断した。腫瘍による食道通過障害があり,悪性腫瘍も否定はできないため,全身麻酔下に経口的下咽頭腫瘍摘出術(TOVS)を第一選択とし,頸部外切開もスタンバイで手術を施行した。ケリー鉗子で牽引して経口的に食道から腫瘍を引き抜いた。腫瘍基部ははっきりせず,粘膜変化がない位置を腫瘍の基部と判断した。そこから5 mm程度をマージンとして設定しKD600高周波ナイフで粘膜切開し,一塊に全摘した。摘出された腫瘍は黄色で長径21 cm大,表面は異型のない重層■平上皮で覆われ,一部が壊死した充実腫瘍であった(図5)。病理組織学的検査:HE染色では大小不同の脂肪細胞像を呈しており,脂肪芽細胞(lipoblast)も散在していた。間質にも濃染した核を有する異型細胞を認めた。免疫染色ではMDM2とCDK4が陽性であり,高分化型脂肪肉腫の診断を得た(図6)。 切除断端は近接していたが,脂肪肉腫に対する効果的な追加治療はなく,経過観察の方針とした。術後1年は1カ月に一度喉頭ファイバースコープを行い,その後は2カ月に一度,同検査を行いフォロー日気食会報,73(3),2022(b)
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