図4 術後3カ月目頸部所見創部よりゴアテックスが逸脱していた.そのまま引っ張って抜去した.抜去後のゴアテックスは6×100×2 mmであり,挿入したものと同サイズであった.囲に感染が起こるとその制御には苦慮することが多い。人工材料周囲に感染を発症した場合は異物である人工材料を取り除かなければ治らない10)。本症例の感染契機は術後の気道狭窄の予防として挿入した気道チューブである。AAやTP1を施行する場合は術中や術後に声帯や披裂部の浮腫や血腫を認めることも多く,輪状甲状靭帯切開によるチューブ留置を行い,予防的気道確保をすることも重要である。しかし本症例のように感染の契機となる場合もあり施行する場合は慎重な判断が求められる。本症例では術中の喉頭内視鏡所見にて患側声帯の浮腫を認めた。安全が最優先と考え,その時点で気道確保を決定した。低侵襲と手術時間の短縮を考え通常の気管切開ではなく術野からの輪状甲状靭帯切開を選択した。しかし,結果的にこれが感染の原因となってしまった可能性が高く,AA+TP1において気道確保が必要な場合は,可能な限り同一術野でない位置で気管切開術を施行するべきと考える。AA+TP1の(a)創部より逸脱したゴアテックス(c)抜去されたゴアテックス術中気道確保はなるべく創部と離れるように下気管切開術を施行するべきと考える。また,術中に声帯浮腫を認めた場合,もう一つの保存的な選択肢として,ステロイド投与での浮腫改善を試みつつ術後頻回に喉頭内視鏡で確認し,やはり気道狭窄の恐れがあればその時点ですみやかに気道確保を行うなどしても良いかもしれない。また感染源となることを考えると留置したチューブは中心静脈カテーテル,尿道カテーテルなどの他の医療器具と同様,可及的にすみやかな抜去を心がけるべきである11, 12)。 ゴアテックスは柔らかく調節がしやすいという利点があるが,その反面術後ゆるみやすいという欠点もある13)。TP1一色原法では甲状軟骨の窓軟骨板と内軟骨膜は保存するのが基本である13)。今回の症例では内軟骨膜が保存されていたため,内方への迷入による晩期合併症である人工材料内腔逸脱14, 15)は避けられた。気道チューブが契機となった感染が起こり異物である人工材料のゴアテックスが感染創内(b)ゴアテックスを引っ張って抜去213日気食会報,73(3),2022
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