日本気管食道科学会会報 第73巻1号
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 *AJCC/UICC staging system 第7版表2 気管傍郭清の施行状況と病理学的気管傍リンパ節転移率III.対象と方法IV.結  果する場合など甲状腺全摘が必要な症例については両側気管傍郭清を施行することとしてきた。この方針による結果をもとに,下咽頭梨状陥凹癌に対し喉頭摘出を伴う原発巣切除術を施行した症例における両側気管傍郭清の必要性を明らかにすることを目的とした。 2005年1月から2015年12月に大阪国際がんセンター(旧大阪府立成人病センター)頭頸部外科で一次根治治療として喉頭摘出を伴う原発巣切除術を施行した下咽頭梨状陥凹癌117例を対象に,気管傍郭清の施行状況,患側および健側の気管傍リンパ節転移率,気管孔周囲再発,術後甲状腺ホルモン内服率,術後ビタミンD3製剤内服率,予後について後方視的に検討した。術前に頭頸部領域に放射線治療を施行されていた症例は除外した。1.患者背景 患者背景を表1に示す。117例中115例(98%)がstage3, 4の進行癌で術後放射線照射は80例(69%)の症例で施行されていた。生存例の観察期間は5〜223カ月で中央値は60カ月であった。2. 気管傍郭清の施行状況と病理学的リンパ節転移率 気管傍郭清の施行状況と病理学的気管傍リンパ節転移の結果を表2に示す。患側のみ気管傍郭清を施行した95例中10例(10.5%)で患側のリンパ節転移を認めた。両側気管傍郭清を施行した22例中3例(13.6%)で患側のリンパ節転移を認め,22例中1例(4.5%)で健側のリンパ節転移を認めた。患側の気管傍リンパ節転移率は11.1%(117例中13例),健側の気管傍リンパ節転移率は4.5%(22例中1例)であった。気管傍郭清患側のみ10/95(10.5%)─両側気管傍リンパ節転移率11.1%9年齢性別clinical T分類*clinical N分類*Stage*術後補助療法生存者の観察期間(月)中央値病理学的気管傍リンパ節転移患側 3/22(13.6%)1/22(4.5%)(13/117)表1 患者背景日気食会報,73(1),2022中央値範囲男性女性T2T3T4N0N1N2a/b/cN3234なしRTCRT範囲健側4.5%(1/22)64歳31─82114393969171610/46/226211104374337605─22397% 3% 8%33%59%15%14%66% 5% 2% 9%89%31%38%31%3. 病理学的T stage, N stageと気管傍リンパ節転移の関係 病理学的T stage, N stageと気管傍リンパ節転移の関係を表3に示す。 pT2,pT3,pT4は11例,42例,64例でリンパ節転移はそれぞれ1例(9%),5例(12%),7例(11%)であった。pN0,pN1,pN2,pN3は13例,14例,84例,6例でリンパ節転移はpN0およびpN1例では認めず,pN2で11例(13%),pN3で2例(33%)であった。pN2の詳細についてはpN2aで4例中1例(25%),pN2bで51例中7例(14%),pN2cの29例中3例(10%)でリンパ節転移を認めた。

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